2017.08.24

絵画に隠された「恐怖」を探る

2017年7月末日。連日続く茹だるような暑さの中、isonoは今話題の身も心も涼しくなれるスポットへ行ってきました。
夏が苦手な私が向かったのはプールでも海でもない、そう…兵庫県立美術館で開催されている、『怖い絵展』です…!
“恐怖”に焦点を当てたこの展覧会、ただ絵を鑑賞するだけではありません。絵の時代背景・意味を知ることで絵に隠された恐ろしい真実を目の当たりにし、ぞっ…としてしまうという、なんとも「怖いもの見たさ」を掻き立てられる内容の展覧会です。
そんな私も、チラシの「どうして。」というキャッチコピーと、怪しくも美しい絵に惹かれ、兵庫県立美術館へと向かいました。

書籍「怖い絵」について

2007年に作家・ドイツ文学者の中野京子さんが発表しベストセラーを記録した、書籍「怖い絵」。これまでに「怖い絵2」「怖い絵 泣く女篇」「怖い絵 死と乙女篇」「新 怖い絵」が出版されており、感性だけの鑑賞では知り得ない作品の魅力・怖さについて教えてくれます。
今回の展覧会は、この書籍を元にした展覧会となっています。「怖い絵」シリーズで紹介された作品はもちろん、この展覧会のために新たに選出した作品も展示されています。展覧会へ行く前に読んでおくと、より一層作品のもつ魅力に気付けるかもしれません。

恐怖に潜む美しさ

キルケー

さあ、いよいよ会場へ。階段下では、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスによる《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》がお出迎えしてくれます。彼女はギリシャ神話に登場する魔女キルケー。人間を動物に変える恐ろしい力を持っています。彼女の足元に横たわるのは、杯を受け取ってしまったオデュッセウスの部下…。玉座の彫刻はまるで彼女が捕食者であることを知らしめているかのよう。会場に展示されている絵の彼女の背後の鏡には戸惑うオデュッセウスが描かれていますが、ここでは鏡が本物になっていて、オデュッセウスに代わり絵に入り込んだかのような写真を撮ることができます。会場内は撮影禁止なので、展覧会の思い出を残したい方はここでキルケーと写真を撮っておきましょう。
展示は恐怖を味わう観点として、「神話と聖書」「悪魔、地獄、怪物」「異界と幻視」「現実」「崇高の風景」「歴史」の6つに分けられています。神話や悪魔を題材にしているものは見るからに不気味で恐ろしい絵も多くありました。しかしそれ以上に「現実」「崇高の風景」「歴史」の観点から見た絵には、思わず身震いしてしまうような恐怖を覚えました。「現実」に描かれるのは、鮮明に、現実的に描かれた死の場面。「崇高の風景」ではこれまで培われてきた風景画になんらかの感情が暗示的に描かれています。「歴史」では、語り継がれる悲劇的なエピソードやその人々の姿…。

 

「崇高の風景」に、ギュスターヴ・モローによる《ソドムの天使》という作品があります。天使、と聞くと一番に思い浮かべるのはどんなイメージでしょうか?私がイメージするのは、きらきらと輝く真っ白の翼を羽ばたかせながらトランペットを吹く幸せの象徴…または美しい女性の姿で全てをあたたかく包み込む平和の象徴…といったところでしょうか。

ソドムの天使

このイメージを持ったまま左側の画像《ソドムの天使》(会場を出た後で購入したポストカードです)を見てみると…。おや…?少し違和感を感じませんか。異様に大きく描かれた2人の天使。2人の下には天使のイメージにふさわしくない真っ暗な町。ぼんやりと霞む背後の景色。赤く描かれている部分は…。そう、この天使たちは幸せや平和をもたらすためにここにいるのではありません。ソドムとは悪徳の町の名。この2人の天使は神の命令でこの町を壊滅させるためにここにいるのです。流れる火の川に、硫黄の雨。その真実を知れば、灰色で描かれた2人の天使が、悪魔や怪物よりも恐ろしいものに映ります。それと同時に、幻想的に描かれたこの絵が見るものに迫ってくるようで、真実を知る前とは全く違う絵を見ているのではないかと思ってしまいます。会場でこの絵を初めて見た瞬間に感じた静けさが真実と重なった瞬間、ぞっ…としてしまいました。しかしその恐怖に垣間見える美しさがあることにも気づきました。不鮮明に描かれた慈悲のない冷酷な天使に、黒く焼け焦げ壊滅していくソドムの町に、この不吉な景色になぜか魅力を感じてしまいました。

この絵の他にも恐怖に潜む美しさを堪能できる作品がたくさん展示されています。そして今回の展示の目玉であるポール・ドラローシュによる《レディ・ジェーン・グレイの処刑》も展示終盤の「歴史」のエリアで鑑賞することができます。チラシの「どうして。」というキャッチコピーも《レディ・ジェーン・グレイの処刑》につけられたものです。16歳の若き女王にせまる最期を描いた作品。縦2.5m×横3mという迫力ある画面から漂う緊張感、細かな描写が彼女の最期の瞬間を想像させ、思わず絵の前で立ち尽くしてしまうほどでした。「どうして。」は彼女の心の叫びなのでしょうか…?それとも…。会場で作品にふれて感じていただきたいので、ここではあえてこれ以上語らないでおこうと思います。ぜひ、会場でその真実を確かめてください!

これから「怖い絵展」に行く人へ

「怖い絵展」では、1つ1つの作品の横に解説がつけられています。作品数も約80点と多いので時間をかけてじっくり楽しめる展示となっています。全部の解説を読んでいくのもなあ…と思う方には音声ガイドがおすすめです。女優 吉田羊さんが怖い絵の世界を案内してくれます。私も音声ガイドを借りましたが、低くゆったりとした声のトーンと怖い世界を演出してくれる音楽で、人が多い中でも落ち着いて展示を楽しめました。現在は兵庫県立美術館で開催中ですが、10月からは東京でも開催され期間も長いです。絵の楽しみ方がわからない方でも、その魅力を知るきっかけを教えてくれます。また、私たちのよく知る画家ポール・セザンヌなどの、意外な一面を知ることもできるかもしれません…。絵画だけではなく、リトグラフやエッチングなどの作品も数多く展示されており、芸術にも幅広くふれられ、とても濃い内容の展覧会です。
まだしばらく暑い日が続きますが、神戸を訪れる機会のある方はぜひ今年の夏の思い出に「怖い絵展」で、ぞっ…としてみませんか?

兵庫会場:兵庫県立美術館
兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1[HAT神戸内]
会期:2017年7月22日(土)~9月18日(月・祝) ※月曜休館(9月18日は開館)
開館時間:午前10時~午後6時 (金・土曜日は夜間開館、午後8時まで)※入場は閉館の30分前まで

東京会場:上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2
会期2017年10月7日(土)~12月17日(日)※会期中無休
開館時間:午前10時~午後5時(※入場は閉館の30分前まで)

公式サイト http://www.kowaie.com
※来場前には必ず公式サイトで最新の情報を入手してください。

さいごに

目玉となるの作品の紹介は公式サイトやチラシでも軽く解説されているので、今回の展覧会の楽しみ方を知ってもらえればと思い、レポートをかきました。美術館へ足を運ぶきっかけになれば幸いです。

この記事を書いた人
Isono(Designer)

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